整形外科を中心とした医療と機能回復

高次脳機能センター

記憶障害とは

注意の能力と同様に、記憶の能力もいくつかに分類することができます。

代表的なものとしては、覚えておく時間の長さによって、短期記憶と長期記憶に分類する方法があります。
短期記憶は、その場で言われた電話番号を覚えておくなどの数十秒のごくわずかな間の記憶です。
一方、長期記憶は今朝どこで何を食べたのかといった一日の出来事を覚えておくだけでなく、小学校のときの修学旅行でディズニーランドに行ったなどの昔の思い出を覚えておくことに関わります。
また、思い出のほか、学校で習った事柄やこれまでの経験によって蓄えた知識も長期記憶ですし、自動車の運転の仕方などの運動に関わる記憶も長期記憶です。

ここでは、記憶の能力を覚えておく時間の長さではなく、覚えて思い出すという記憶の一連の過程や、何を覚えるかという対象によって分類してみたいと思います。

私たちの記憶は、ものを覚える段階(専門的な用語では符号化ともいいます)、覚えたものを覚え続ける段階(貯蔵)、そして思い出す段階(検索)の大きく3つの段階に分けることができます。
記憶障害では、覚えることが困難なのかあるいは思い出すことが困難なのかによって、その症状が異なってきますし、対応方法も違ってきます。

  • (1)「覚える、覚えておくこと=符号化・貯蔵」の障害

    符号化は、先述のとおり、覚える段階を指します。
    符号化の段階では、私たちが覚えるべき情報を頭の中で処理しやすい形に変換します。
    符号化された情報は、頭の中で整理されたりまとめられたりして恒久的に貯蔵されます。
    ですから、符号化は記憶の入り口となるところなので、符号化に失敗すると、記憶は定着しません。

    符号化の失敗は、注意の問題に関係していることがあります。
    隣の話し声に気が気になって目の前の覚えるべきことをうまく覚えられなかった、郵便に目を通しながら鍵を置いたら鍵を置いた場所を忘れてしまった、などがこれに当たります。

  • (2)「思い出すこと=検索」の障害

    検索は、思い出す段階を指します。
    この段階に問題のある人は、覚えることはできるけれどもそれを頭の中で検索できません。
    ですから、情報をうまく検索できるような手がかりを有効に利用することが重要になります。

    以上のように、記憶の過程のどこに問題があるのかによって対応方法も異なってきます。

    では次に、覚える内容が何かという点に注目して、その対応方法を考えて見ましょう。
    私たちが覚える情報は見て覚える視覚的な記憶と、言葉による言語的な記憶の二つに大別することができます。
    記憶に問題のある人では、何でもかんでも覚えられないというわけではなく、覚える内容によっては良く覚えられるということもあります。
    つまり、見て覚えることは得意だけど言葉で覚えることは難しい、あるいはその反対といったことが生じることがあります。
    ですから、記憶に問題があるからといって全ての事柄の記憶が難しいと決めつけず、どんな情報だったら覚えられるのかについて日ごろの行動を観察することが重要です。

高次脳機能障害への日ごろの対応方法については、
『高次脳機能障害とともに ― ご家族の方へ』(PDF資料 39.2MB)
をご参照ください。